デジタルインフラ社会、18分で会社設立!?CODE BLUE2016

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2016年10月20日と21日に情報セキュリティの国際会議「CODE BLUE 2016」が東京で開催されました。今年は4年目となる開催で過去最多の700人が参加しました。国際イベントで700人というと、少々桁が少なすぎるように思ってしまいますが、そこは見本市などと違って、情報セキュリティに関する専門家が集まる会議ですので、情報セキュリティに関する世界最高の頭脳が700人も一つの場所に集まったというのは、それだけでひとつの事件と言えるのです。

カンファレンスでは情報セキュリティに関する様々な公演が行われましたが、その中でも電子政府の取り組みで注目を集めたのがエストニアの事例でした。

エストニアでは税務申告の約95%がe-taxで申告

エストニア共和国は北ヨーロッパに位置し人口134万人の小国です。2004年にEUに加盟し、2008年にはNATOのサイバーテロ防衛機関の本部所在国となっています。今回の公演ではエストニア政府商務部門「e-Estonia」ショールーム マネージングディレクターのアンナ・パイペラル氏がエストニアの先進的な電子政府の取り組みについて紹介しました。

アンナ・パイペラル氏は、「結婚や離婚、土地売買以外のほぼ全ての行政手続きがオンラインでできます」とエストニアの電子政府化の現状を報告しました。具体的な事例として法人等記ならなんとその登記はわずか18分程度で完了できる、日本でのお役所仕事の現状に慣れてしまった私達としては、お昼ごはんを食べるよりもはやく終わってしまう、「会社の設立」という重大事に、なんだか心と体がついていかない気持ちにさせられますね。

さらに、エストニアでは税務申告の約95%がe-taxで申告されていますが、ひとりあたりの納税申告は3分程度ですべての必要な行政手続きが完了できます。また、日本では待たされるのが当たり前の薬の処方箋の発も、99%電子化されており、処方箋をもらうために薬局へ行く必要がないため、待ち時間というものすらありません。

電子政府の取り組み自体は、日本を始め先進国でも政府のスリム化の観点から最重要課題となっていますが、なかなかうまくっていない、というのが実情です。その中で東欧の小国であるエストニアでは、なぜこんなにも理想的ともいえる電子政府が実現しているのでしょうか?

エストニアのIDカード保有率は94%

エストニアの電子政府の社会サービスを実現するために欠かせないのが2002年より配布されたIDカードによる電子個人認証です。日本の住基カードのように、エストニアでもこのIDカードで納税などの様々な電子サービスを利用できます。

エストニアのIDカード保有率は94%になりますが、こうした普及率の高さの背景には、エストニア政府が発行するIDの徹底したセキュリティ保護があげられます。

IDを使って電子サービスを受けるには、まず本人認証を行うのですが、IDカードの個人情報はもちろん暗号化され保護されています。また、政府が保有している個人情報を誰が閲覧可能か、ということは政府が決めるのではなく、IDの所有者である自分自身で決定することができます。

もちろん、自分の情報に誰がいつアクセスしたのかを記録を取り寄せることができますし、不審な閲覧があった場合は相手が公務員であっても詳細な調査を要求することができます。

また、各種サービス利用時に保存されるデータは、ビットコインの中核技術でもあるブロックチェーンの仕組みにより信頼性を確保しています。ブロックチェーンとは分散してデータを保存するため、中央で集中して管理している従来の仕組みとちがって改ざんや攻撃などが非常に困難なシステムで、フィンテックの現場で非常に信頼性が高いと評価されています。

このようにエストニアでは電子政府を進めるために、安全性と透明性を徹底的に確保することで、広く電子サービスを普及させているのです。

日本で導入されている住基ネット、目的は自治体事務作業の効率化

日本で導入されている住基ネット(住民基本台帳ネットワーク)は、全国の自治体で住民票を電子化し本人確認(氏名、生年月日、性別、住所)ができる仕組みです。ただ、目的は、あくまでも自治体の事務作業の効率化であって、個人の情報を徹底的に保護した上で、国民の利便性を高めていくという発想では作られていない、といえます。

そのため、住基カード自体(ICカード)は、現状ではあまり普及していません。国民がメリットを感じるどころか、なぜ自分たちがカードを使わなくてはいけないのか、ということに疑問を持っているからでしょう。

情報セキュリティを徹底的に重視する

日本で国が管理する情報システムとして、住基カードの他にマイナンバーがあります。マイナンバーは政府が住基カード以上に力を入れている経緯もあり、税務、自動車登録、戸籍など普及範囲は徐々に拡大しています。

しかし、ほんとうの意味で電子政府が普及していくためには、エストニアのように、国民の利便性を第一に考え、そのための基盤として情報セキュリティを徹底的に重視するという態度が欠かせないでしょう。

日本で、「情報セキュリティ」というと、ハッキングとかその防衛などといった文脈で語られることが多いですが、国民の生活の質の向上や利便性の拡大などに使ってこそ、エストニアのようなレベルで電子政府が普及していくのではないでしょうか。