自社のサービスを健全に運営し、ユーザーに安定した価値を提供し続けるためには、システムの安定した稼働が必要です。
堅牢なシステム監視体制を築きたいものの、市場には多様な監視ツールが溢れており「自社に最適なツールが分からない」と頭を悩ませるシステム担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、システム監視の重要性を整理した上で、自社にマッチする製品を選ぶための5つの比較ポイントと、国内外の代表的な監視ツールを解説します。
目次
システム監視ツールとは?

システム監視ツールとは、サーバ・ネットワーク機器をはじめとするITインフラの稼働状況を継続的にチェックし、異常を早期に把握するためのソフトウェアです。
昨今の企業活動はITインフラへの依存度が高く、万が一システム障害でIT機器がダウンすれば、業務の停滞による利益損失や企業としての信頼価値低下など、甚大なリスクをもたらします。サービスの安定供給と企業価値を守るために、システム監視は不可欠な取り組みです。
しかし、サーバへ個別にログインしたり、機器の状態を目視で確認したりと、手動での監視業務は大きな負担になります。
システム監視ツールを導入すれば、対象機器の稼働状況を自動でチェックし、1つの管理画面に情報を集約できます。システムの異常発生時には管理者に通知を送る、自動で初動対応を行うなどの機能も持ち、運用プロセス全体の最適化も実現できます。
監視ツール選びの5つのポイント
自社の運用に合ったツールを選定する際に、参照すべき5つの軸を紹介します。
比較軸①:導入方式(エージェントの有無)
監視データの取得方式は、大きく分けて2種類あります。
・エージェント型:対象の機器に専用のソフトウェアをインストールする方式です。詳細な情報の取得や細かい設定が可能ですが、対象機器のリソースを消費する懸念があります。
・エージェントレス型:ソフトウェアをインストールせず、APIや通信プロトコルを用いて外部から監視する方式です。導入が容易で、機器への負荷が小さいことが特徴です。
取得できる情報や制御の細かさを優先するか、運用の手軽さを優先するかで判断します。
比較軸②:監視可能な範囲
・監視対象の幅広さ:社内サーバ(オンプレミス)と複数のクラウド環境を組み合わせて利用している場合、環境を問わず、1つの画面で統合管理できるツールが有効です。
・監視項目の網羅性:機器の稼働を示す「死活管理」だけでなく、ログ監視、パフォーマンス監視、プロセス監視など、自社の求める監視項目が含まれているか確認します。
・スケーラビリティ(拡張性):将来的なサーバ台数の増加や、複数拠点への展開の可能性がある場合は、大規模なシステム環境にも対応できるかを確認します。
比較軸③:システム障害への対応

システム障害が発生した際の通知や可能なアクションについて、下記のような項目を確認します。
・アラートの通知方法はメールだけでなく、Slack/Teams等のチャットや自動音声電話など多様な方法があるか
・同一原因による通知を1つに集約するなど、条件の設定は可能か
・障害発生時に、再起動などの初動対応を自動で実行できるか
近年は「AIOps」と呼ばれる、AIが障害の発生予測や原因究明を行う機能もトレンドになっています。各ツールの最新アップデートにも注目です。
比較軸④:自社の運用体制とのマッチング
・OSSか有償パッケージか:OSS(オープンソースソフトウェア)は無料で導入できて設計の自由度が高い反面、構築・運用には高度な専門知識が必要です。設定の手間を省きたい場合は、有償のパッケージ製品が適しています。
・操作性とサポート体制:誰でも利用できるツールを求める場合は、直感的に操作しやすいダッシュボード(GUI)を備えていることが重要です。また、トラブル時のサポートの有無や、日本語対応の充実度も確認事項です。
比較軸⑤:コストと料金体系

予算の見通しや期待する性能に応じて、料金体系を検討します。
・OSS:ソフトウェアのライセンス自体は無料ですが、システム構築やトラブル対応にあたってエンジニアの人件費が発生します。社内に高い技術力がある場合は、メリットが大きい方式です。
・固定ライセンス制:監視する機器数や、監視項目数でライセンスを購入します。毎月の予算が固定されるため、コストを予測しやすいのが特徴です。
・従量課金制:監視対象の機器数に加えて、取り込むデータ量や利用機能に応じて料金が加算されます。
代表的な監視ツール6選
ここからは、国内外で実績を誇る代表的な監視ツール6製品を紹介します。
1. パトロールクラリス

国内4,000社以上の導入実績を持つ、国産のエージェントレス型ツールです。
開発元は30年以上にわたる運用実績を持ち、直感的に操作しやすい管理画面や充実した日本語サポートなど、国内の運用担当者に寄り添う点が特徴です。APIも豊富なため、データセンターやMSP事業者などの監視サービスの基盤にも多数採用されています。
また、同社のサービス群を組み合わせることで、アラート通知の集約・仕分けや、自動音声による電話通知、初動対応の自動化も可能です。
料金体系は、各機器の監視項目数に応じて必要な分だけライセンスを購入する形のため、コストの最適化が期待できます。
2. JP1

国内トップクラスのシェアを誇る、エージェント型の統合システム運用管理ツールです。監視だけでなくジョブ管理やバックアップなど、IT運用全体を管理できます。
アラート通知方法の細かな設定に加え、生成AIアシスタントがインシデントへの対処を対話形式で支援する機能も搭載しています。
日本語サポートが手厚い一方、高機能ゆえに導入・運用の難易度やコストは高く、大規模システム向けと言えます。
3. Zabbix

世界中で圧倒的なシェアを誇る、OSSの監視ツールです。エージェント型で詳細な監視ができるほか、エージェントを用いずにSNMPで監視することも可能です。オンプレミスからクラウド環境まであらゆるIT環境に対応でき、多機能性を強みとしています。
海外製のツールですが、日本のユーザーコミュニティも充実しています。ただし設定・運用には専門知識が必要なため、導入の難易度は高いと言えます。
4. System Answer G3

手軽に導入できる、国産のエージェントレス型ツールです。特にネットワーク・サーバーインフラの性能監視に強みを持っています。1分間隔で収集した性能情報を5年間保存でき、リアルタイムの状況も、中長期的な傾向も把握できます。
オプションとして、将来のシステム障害を予測する機能や、リソースが最大値を超える時期を予測する機能も提供しています。料金体系は、監視項目数に基づきます。
5. OpManager

海外製のエージェントレス型ツールです。管理画面の分かりやすさが特徴で、テンプレートを用いた簡単な操作で初期設定が完了します。監視結果と連動してネットワーク機器の構成を可視化するマップ機能もあり、システムの異常を一目で把握できます。
AIを活用した機能として、過去のデータに基づき、アラート通知を行うための最適な閾値を自動で設定することができます。料金は、ネットワーク規模(対象機器数)に応じて複数のプランが用意されています。
6. Datadog

海外製のSaaS型監視プラットフォームです。AWSやAzureなどのマルチクラウド環境や、アプリケーションのパフォーマンス監視に強みを持ちます。エージェント型であるもののインストール作業は容易で、あらゆるプラットフォームと即座に連携できます。また独自のAI機能「Watchdog」を搭載しており、AIが自動で異常を検知し、根本原因の分析を行うことができます。
料金は、監視対象機器数および対象機器のデータ量に基づく従量課金制のため、コストが膨らむリスクに注意が必要です。
まとめ:自社のニーズにあったツール選びを
本記事では、システム監視ツールの比較軸と主要なツールを紹介しました。各ツールがどのような企業におすすめか、最後に要点をまとめます。
・自社の数百~数千台の監視対象を管理する大手企業:JP1、パトロールクラリス
・自社の数十台規模の監視対象を管理する中小企業:System Answer G3、OpManager
・監視・運用をサービス展開するマネージドサービス事業者:パトロールクラリス
・顧客向けに独自構築したシステムを運用するSIer企業:Zabbix
・マルチクラウド環境やアプリケーションの監視に特化したい企業:Datadog
本記事が、自社の要件を整理して最適な監視ツールを選定する際の一助となれば幸いです。
