SNMPは、動作自体は非常にシンプルです。ただ、アクセス対象であるMIB(管理情報ベース)はSNMPと違ってなかなか複雑です。今回は、このMIBがどのような構造で、また、標準MIBの基本と言えるMIB-2に、具体的にどのような情報が定義されているか触れたいと思います。
目次
MIB-2は、機器の基本的な情報を管理
機器の管理している情報は多岐に渡ります。その中で、最も標準的なMIBとして位置付けられているのが「MIB-2」です。
MIB-2は、MIBオブジェクトツリーの「インターネットサブツリー」の下にあります(1.3.6.1.2.1)(オブジェクトツリーに関しては、第2回の「オブジェクトID」の項目をご覧ください)。
MIB-2は、RFC1213において、171種類の管理対象オブジェクトを定義し、171種類の管理対象オブジェクトは、11個のグループに分類されています。
RFC1213で定義されている、MIB-2の監視対象オブジェクトのグループ
1 System
2 Interface
3 Address Translation
4 IP
5 ICMP
6 TCP
7 UDP
8 EGP
9 OIM
10 Transmission
11 SNMP
Systemグループ(1.3.6.1.2.1.1)
Systemグループは、「機器のシステムに関係する設定」を管理します。
sysDescr エンティティの情報
sysObjectID ベンダのOID
sysUpTime 最後に初期化されてからの経過時間
sysContact ノードの管理者の情報
sysName ドメイン名
sysLocation ノードの物理的な位置
sysService エンティティが提供するサービス
Interfaceグループ(1.3.6.1.2.1.2)
Interfaceグループは、機器の保有するハードウェアインターフェイスに関係する設定を管理します。機器が保有するインターフェイス数は、Interfaceグループ最初のオブジェクト「ifNumber」に格納されています。
設定を格納するテーブル行は、ifNumberに保有されているインターフェイス数で追加されます。
ifNumber 機器の保持しているインターフェイス数
ifTable 各インターフェイスの設定が格納されたテーブル
ifEntry テーブルのリスト
ifIndex インターフェイスのインデックス
ifDescr このインターフェイスの説明
ifType インターフェイスタイプ(*2)
ifMTU MTUの値
ifSpeed 帯域
ifPhysAddress 物理アドレス
ifAdminStatus 設定状態
ifOperStatus 動作状態
ifLastChange 現在の動作状態に変化した時刻
ifInOctets 受信したすべてのオクテット数
ifInUcastPkts 受信したユニキャストパケット数
ifInNUcastPkts 受信した非ユニキャストパケット数
ifInDiscards エラー以外の理由で破棄された受信パケット数
ifInErrors エラーになった受信パケット数
ifInUnknownProts サポートされていないプロトコルのため破棄された受信パケット数
ifOutOctets 転送したすべてのオクテット数
ifOutUcastPkts 送信したユニキャストパケット数
ifOutNUcastPkts 送信した非ユニキャストパケット数
ifOutDiscards エラー以外の理由で破棄された送信パケット数
ifOutErrors エラーになった送信パケット数
ifOutQLen 出力用のキューにためられるパケット数
ifSpecific 追加情報への参照
(*2)インタ-フェイスタイプのリストは、RFC1213で定義されています。
Address Translationグループ(1.3.6.1.2.1.3)
Address Translationグループは、MIB-2では未使用です。MIB-1との互換性のために残されています。
IPグループ
IP(Internet Protocol)グループは、プロトコルの使用に関する設定を格納しています。
ipForwarding このエンティティがゲートウェイであるかどうか
ipDefaultTTL 標準のTTL値
ipInRecevies 受信データグラム総数
ipInHdrErrors ヘッダーのエラーのために破棄した受信データグラム数
ipInAddErrors 無効なIPアドレスのために破棄した受信データグラム数
ipInForw-Datagrams ほかのエンティティへ転送した受信データグラム数
ipInUnknown-Protos サポートされていないプロトコルのため破棄された受信データグラム数
ipInDiscards エラー以外の理由で破棄された受信データグラム数
ipInDelivers 正常に受信したデータグラム数
ipOutRequests 送信データグラム総数
ipOutDiscards エラー以外の理由で破棄された送信データグラム数
ipOutNoRoutes 経路不明で破棄された送信データグラム数
ipReasm-Timeout 再構成のためにデータを保持できる時間
ipReasmReqds 再構成を必要としたIPフラグメント数
ipReasmOKs 正常に再構成できたフラグメント数
ipReasmFails 再構成で検出したエラー数
ipFragOKs 正常にフラグメントされたデータグラム数
ipFragFails フラグメントされずに破棄されたデータグラム数
ipFragCreates フラグメント作成数
ipAddrTable IPアドレスに関するテーブル
ipAddrEntry IPアドレスに関する情報のリスト
ipAdEnt-Addr エントリのIPアドレス
ipAdEnt-IfIndex インターフェイスのインデックス
ipAdEnt-NetMask サブネットマスク
ipAdEnt-BcastAddr ブロードキャストアドレスの最下位ビット値
ipAdEnt-Reasm-MaxSize 処理可能なデータグラムのサイズ
ipRoutingTable IPルーティングテーブル(現在は未使用)
ipNetTo-MediaTable IPアドレスから物理アドレスへのマッピングテーブル
ipNetTo-MediaEntry テーブルのリスト
ipNetToMedia-IfIndex インターフェイスのインデックス
ipNetToMedia-PhysAddress 物理アドレス
ipNetToMedia-NetSddress 対応するIPアドレス
ipNetToMedia-Type メディアタイプ
ipRouting-Discards 破棄されたルーティング項目数
ipForward IPの転送テーブル
ipForward-Number 転送テーブルのエントリ数
ipForward-Table 転送テーブル
ipForward-Entry テーブルのリスト
ipForward-Dest あて先のIPアドレス
ipForward-Mask サブネットマスク
ipForward-Policy 転送ポリシー
ipForward-NextHop 次にルーティングするノードのIPアドレス
ipForward-IfIndex 次にルーティングするローカルインターフェイスのインデックス
ipForward-Type ルートタイプ
ipForward-Proto ルートを調査したプロトコル
ipForward-Age ルートが最後に更新されてからの経過時間
ipForwardInfo ルーティングプロトコルのMIB定義参照
ipForward-NextHopAS 次にルーティン グするAS
(Autonomous System)番号
ipForward-Metric1 ルートの1次メトリック
ipForward-Metric2 ルートの代替メトリック
ipForward-Metric3 ルートの代替メトリック
ipForward-Metric4 ルートの代替メトリック
ipForward-Metric5 ルートの代替メトリック
次回は、「ICMP」グループ以降のオブジェクトを紹介します。今後もSNMPの需要はさらに高まることが予想されます。あなたのSNMPの理解に、少しでも役立てば幸いです。