ITシステムが複雑化していく現代、システム障害が発生した際に原因を特定することはますます困難になっています。障害によるサービスの停止が長引けば、企業に多大な経済的損失と、ブランドの毀損をもたらしてしまいます。

そこで現在、単に障害を検知する監視ツールだけでなく、「システムの状態を常に把握し、異常が発生した場合に情報を繋ぎ合わせて根本原因を突き止めるオブザーバビリティツールの必要性が高まっています。

各ツールにはそれぞれ異なる強みがあるため、自社の環境や組織体制に最適なツールを導入することが重要です。

本記事では、ツール選定の4つのポイントを提示した上で、主要なオブザーバビリティツール4つ(New Relic、Datadog、Splunk Observability Cloud、System Answer G3)を比較します。

オブザーバビリティの概念については、以下の記事で詳しく解説しています。

ツール選定における4つのポイント

ツールを選ぶ際は、以下の4つの軸で自社の要件を整理することが重要です。

① 可視化する範囲

オブザーバビリティの対象は、インフラからアプリケーション層、エンドユーザーの挙動まで、多岐に渡ります。データを取得する対象の範囲や、テレメトリデータ(メトリクス、トレース、ログ)の種類ごとに機能が分かれているツールもあれば、全てを一元的に可視化できるツールもあります。
そのため、自社が可視化したい領域を網羅しているかを確認する必要があります。

同時に、各データを関連づけてスムーズに分析できるか、1つのダッシュボードで分かりやすく閲覧できるか、といった性能も重要です。

② 既存環境との親和性

マルチクラウドや、オンプレミスとのハイブリッド環境に対応しているかなど、自社のシステム構成との接続が容易かを確認します。また、ツールの提供形態による違いも考慮する必要があります。

SaaS型:サーバの用意は不要で、すぐに導入できます。ただし、自社のデータを外部のクラウド環境に送信する必要があります。
パッケージ型:自社のサーバやネットワーク内に構築するため、データが外部に漏れる心配がありません。

提供形態は、自社のセキュリティ要件やシステム構成に応じて判断します。なおSaaSツールを導入する場合、エージェントが自社のリソースをどの程度消費するか、負荷の大きさも考慮します。

③ 料金体系と予測可能性

料金体系は、ツールによって以下の要素を組み合わせたプランが存在します。

・取り込むデータ量
・対象機器数(ホスト数)
・オブザーバビリティの機能数
・ユーザー数

トラフィック急増時にコストが急増するリスクがないか、性能の高さ・コストと自社のニーズが見合っているか、などを検討します。

④ サポート体制

導入時やトラブル発生時に、ベンダーや代理店からどの程度支援を受けられるかを確認します。自社のエンジニアのリソースが不足している場合には、専任担当が伴走してサポートする形が有効です。

マニュアルや管理画面に日本語の設定はあるか、日本語でサポートを受けることが可能かなど、言語対応も重要です。

主要ツール比較4選

ここからは、国内外で実績を誇る代表的なツール4製品を紹介します。

1. New Relic

 国内シェア1位の代表的なサービスです。海外製であり、SaaS型のクラウドサービスとして提供されています。アプリケーションパフォーマンス管理(APM)に強みがあり、他にもログ、トレーシング、インフラ監視など幅広い機能を統合的に提供します。APMでは、詳細なトランザクションの追跡や、コードレベルでの洞察を行い、深い分析を強みとしています。

料金体系の特徴は、フルスタックの(全ての機能を含んだ)オブザーバビリティを、単一のサービスとして提供することです。
料金は、取り込むデータ量とユーザー数で決まります。毎月100GBまでのデータを無料で取り込み、以降は$0.30/GBの従量課金です。ユーザー数の比重が大きいため、少人数のチームで大規模なシステムを扱う場合はコストパフォーマンスが高くなります。

なお、期間制限のない無料プランが提供されているため、本番導入前に十分な検証が可能です。サポート面では、導入後も同じ営業・エンジニアが伴走し、課題解決まで手厚く支援します。

2. Datadog

近年急速に成長し、市場シェアを拡大しているサービスです。海外製で、SaaS版として提供されています。1つのエージェントをインストールするだけで情報を収集し始めるため、導入スピードの速さが評価されています。

インフラ監視に強みを持ち、インフラやログ、セキュリティなど、複雑化した環境全体で高度な管理を可能にします。直感的で優れたダッシュボードや、1000件を超えるインテグレーションを持ち、あらゆるシステム環境のデータを一元管理できる完成度の高さが特徴です。なお、機能が多い分初期設定の難易度は高いと言えます。

料金体系は、インフラ、APM、ログなど利用したい機能ごとに分かれており、柔軟性が高い反面、複雑さが課題と言えます。無計画にデータを取り込んだり機能を追加したりするとコストが膨らむリスクがあるため、事前の設計が重要です。
サポートは、Webフォームでの問い合わせが中心となっています。

3. Splunk Observability Cloud

海外製のツールで、SaaS型とパッケージ型の両方に対応しています。サーバやネットワーク機器のログデータを収集・分析するソフトウェアを開発してきたSplunk社が提供するサービスで、取得したログやデータを遅延なく分析・可視化することができます。

最大の特徴は、データ収集の標準規格である「OpenTelemetry」に完全準拠している点です。ベンダー独自のエージェントに依存しないため、将来的なベンダーロックインを回避でき、ツールの切り替えや移行に伴うコストを抑えることができます。

料金は、取り込むデータ量に基づく体系のほかに、ワークロード(分析に使用されるリソース)をベースとしたプランも選択できます。
またインフラ監視、アプリケーション性能監視などが機能として独立しており、必要な領域だけをピンポイントで導入できる価格体系(インフラ監視のみのプランなど)を持っています。

日本語のサポートとしては、電話窓口を用意しているほか、代理店のエンジニアによる技術的支援を受けることが可能です。

4. System Answer G3

国産のインフラ・ネットワーク監視ツールであり、近年、オブザーバビリティ領域へと機能を拡張させています。

機能としては、取得したアプリケーションの性能情報を可視化する「APIオプション」や、システムの状態の変動を元に問題発生を予知する「将来予測オプション」、ネットワーク遅延などによる影響を可視化する「CX監視オプション」、ログを管理する「ログオプション」があります。

日本語で分かりやすいUIと、国産ならではの手厚いサポート体制が強みの本製品ですが、料金は、監視対象の機器数や取得項目数に応じたライセンス体系を取っています。取得データ量に基づく従量課金ではないため、コストの予測が立てやすいというメリットがあります。
また必要なオプション機能だけを個別で購入して追加できるため、無駄のない段階的な拡張が可能です。

まとめ:自社のニーズにあったツール選びを

ここまで、オブザーバビリティツールの選定ポイントと主要4製品の機能をご紹介しました。ツールごとの強みを一覧で整理すると、以下のようになります。

New RelicDatadogは、アプリケーションからインフラまで全域を高度に網羅するトップクラスの性能を誇ります。ただし料金が高額になりやすく、使いこなすには高度なスキルが求められます。

一方、Splunk Observability CloudSystem Answer G3は、システム全体を網羅する機能性や、高度な自動分析の性能面ではNew RelicやDatadogといったツールに譲るものの、必要な機能だけを個別で購入・導入できる柔軟性が強みです。

海外製のフルスタックツールを導入しても、エンジニア不足によって十分に使いこなせないケースは少なくありません。特に中堅企業においては、「まずはネットワークの遅延だけを可視化したい」「次にサーバのリソース不足を予測したい」といったように、現場の明確な課題に合わせて必要な機能から導入し、徐々にオブザーバビリティの領域を広げていく手法が現実的です。

今後、オブザーバビリティの概念がより幅広い企業へと浸透していく中で、市場ではこうしたニーズに応える「自社に必要な領域に絞ってスモールスタートできる柔軟な国産ツール」の開発が活発化していくと予想されます。

今後もユーザーの選択肢は広がっていくと考えられるため、新製品の登場に注目しつつ、自社で確実に効果を発揮できるツールを選定してみてください。