近年、DXやテレワークの推進に伴い、企業のIT活用が進んでいます。この状況を背景に、企業の資源であるデータの価値は日に日に高まっています。
そんなデータを狙った「サイバー攻撃」も増え続けているため、何らかの形で被害を受けた企業も多いのではないでしょうか。
本記事ではサイバー攻撃の被害を最小限に抑える「バックアップ」をテーマに、その手法を詳しくご紹介致します。
目次
1億円の損失をもたらした「データロス被害」
突然ですが、データロスによる被害額がどのくらいなのかご存知でしょうか?
DELL Technologiesの報告資料『Global Data Protection Index 2021』によると、
過去1年間におけるデータロスの被害額は「959,493ドル」と報告されており、日本円に換算すると「約1億円」にも昇ります。
更に2018年から2019年にかけて、データロスの被害額は約5倍も高くなっているんです。
このことからもデータロスによる被害は、年々拡大していることが分かります。
最近だと、徳島県の病院がデータロスの被害を受けています。
2021年10月末、同病院で保存されている患者のデータを狙ったサイバー攻撃によって、医療データが全て消失してしまったようです。人命に関わるデータが消失した同病院の被害額は、想像もつきません。
もはや、データロスによる被害は他人事ではなく、データを扱う全企業にとって身近な問題なんです。
サーバーのバックアップで防ぐ「データロス」
企業に多大なる損失をもたらす「データロス」ですが、大きく2つの対処法があります。
1.データロスが起きないように、未然に防ぐ。
2.データロスが起きても、迅速に対応する。
今回は2に分類される「バックアップ」をテーマに、「どうやって迅速に対応するのか」を説明致します。
3種類のバックアップ形式
バックアップの取り方には、以下3種類の方法があります。
1.フルバックアップ
2.差分バックアップ
3.増分バックアップ
各バックアップ形式について、図を用いながら説明いたします。
フルバックアップ
フルバックアップとは、毎回、サーバー内にある全てのデータを複製することです。
もし何らかの影響でデータが破損し復旧しなければならないとき、データを復元する回数が1度で済むため、手間が取られないメリットがあります。
一方、バックアップする度に大量のデータを保存しなければならないため、データの維持に多くの費用を要します。
バックアップ形式にフルバックアップを採用する際は、頻度を抑えた運用を心掛ける必要があります。
増分バックアップ
1度目のバックアップはフルバックアップ同様、サーバー内に保存している全てのデータを複製します。
2度目以降、前回のバックアップ時を起点にして増加したデータを複製するのが、増分バックアップです。
常に増加したデータのみを複製するため、データ容量を最小限に抑えることができる選択です。
しかし復旧時には、その時点で複製した回数分だけ、データを復元しなければならないため、作業に手間がかかってしまいます。
差分バックアップ
1度目のバックアップ時は、サーバー内にある全てのデータを複製します。
2度目以降のバックアップでは、1度目のバックアップで保存したデータとの差分を複製するのが差分バックアップです。
フルバックアップと増分バックアップの中間に位置する選択肢です。
データ容量で比較すると、フルバックアップよりはデータ容量を抑えることができるものの、複製するデータに重複が出てしまいます。
また復旧時の手間も、増分バックアップよりは回数が減るものの、最低2回はデータを復元しなければなりません。
サーバーに保存した「データ」のバックアップ先3選
サーバー内に保存しているデータをバックアップするにあたり、どこに保存するか迷われている方は多いかと思います。
そこで今回は数ある選択肢の中から3つのバックアップ先をご紹介致します。
磁気テープへの保存
前回の記事でも取り上げたように、ここ最近、再評価され始めた「磁気テープ」。
大容量のデータを長期間保存することができる上に、磁気テープの保管には場所による制限がほとんどないことから、一見メリットの多い選択肢です。
しかし毎日、磁気テープを変える必要があるなど実際の運用において、かなり工数がかかるようです
現場の社員が語る「磁気テープの体験談」が書かれた記事です。運用の現場が磁気テープに対して、どのような印象を抱ているか気になる方は是非、ご覧ください。
NAS(Network Attached Storage) への保存
NAS(Network Attached Storage) とは、ネットワーク越しにデータを保存できるファイルサーバーです。
バックアップ先によく選ばれる選択肢です。
接続するだけでデータを保存できるため手頃な手段である一方で、ウイルスが感染した機器と同一ネットワークにある場合、元データとバックアップデータ、両者ともに消失する恐れがあります。
クラウドストレージへの保存
第三者が提供するストレージに、インターネットを通じてファイルやデータをバックアップする選択肢です。
クラウドストレージは安全な遠隔地にデータが保存されている上に、厳重にデータが管理されているため、リスクが少なく優れた保存先と言えます。
しかしバックアップデータが膨大である場合、転送に時間がかかってしまうといったデメリットがあります。
これまでデータの「バックアップ形式」や「バックアップ先」をご紹介致しました。
各企業の状況や、バックアップの目的に応じて、最適な手段を見極めていきましょう。