Gartner社が発表した「2022年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド

今後ビジネス業界のスタンダードとなり得るトレンドをまとめたランキングですが、前回記事ではこのうちジェネレーティブAIの解説を行いました。

シリーズ第2弾となる今回は、同じくトレンドにランクインした「オートノミック・システム」を取り挙げてみることにしました。

前回のジェネレーティブAIは認知度が低く、インターネット上では限られた情報しか見つけることができませんでしたが、どうやら「オートノミックシステム」も現時点では親しみの薄いマイナーワードのようです。

そこで、オートノミックシステムについてもGartner社の発表資料を参考にしつつ、今入手できる情報を組み立てながら筆者なりの解釈で解説していこうと思います。

この点をご留意の上、本記事を読み進めていただければ幸いです。

目次

オートノミックシステム 10秒まとめ

  • オートノミックシステムとは、特定の分野において、人間の介入が無くともで能動的に動いてくれるシステムのこと。
  • オートノミックシステムとは、AIとRPAの要素を持ち合わせたものと考えられる。

オートノミックシステムって何?

オートノミックシステムをWeb検索してみると、相変わらず日本語で閲読可能な情報は少ないものの、英語で解説したWebサイトがいくつか見つかりました。

例えば、ある学術系エンサイクロペディアでは、オートノミックシステムを「自己管理能力を備えたコンピューティング技術」と位置付け、オートノミックコンピューティングとも表現しています。

どうやら、国外のビジネス・学術界においてオートノミックシステムとオートノミックコンピューティングはほぼ同義の概念として捉えられているようです。

オートノミックコンピューティングとは、人間が介在することなく、自律的にシステムを操作したり、プログラムの問題点を発見・修復して潜在的な攻撃を防ぐ機能を持ったコンピューター・システムを指します。

端的に言えば、環境や状況の変化への適応を自発的に行う、ヒトの自律神経のようなコンピューター技術といったイメージでしょうか。

オートノミックコンピューティングは、元々2001年にIBMによって提唱され、以下の4要素を備えた概念として定義されています。

  • 自己構成 (Self-configuring)
  • 自己修復 (Self-Healing)
  • 自己最適化 (Self-optimizing)
  • 自己防御 (Self-protecting)

IBMは、複雑性を増し続ける昨今のIT構築・管理・運用に対して上記のようなアプローチを取ることで、ITシステムの信頼性や可用性の向上などが実現すると主張しています。

つまるところ、人力では限界のあるIT運用をコンピューターが勝手にやってくれる」ことをオートノミックシステムと呼ぶのでしょう。

ここで筆者が抱いたのが、「RPAやAIと同じなのでは?」という疑問です。

人手で行うタスクをコンピューターが代行してくれるという点では、オートノミックシステムもRPAやAIも、ほぼ同じ役割を持った存在のように思えます。

AI+RPA=オートノミックシステム?

オートノミックシステムとその他の自動化機能を持つ概念を区別するためには、まずAIとRPAの違いを整理する必要がありそうです。

AIは「Artificial Intelligent」の頭文字をとった略称であり、人間のように自律的に考えることや判断を行うことができる技術を意味し、日本語では人工知能と呼ばれます。

AI技術は、コンピューターに膨大なデータを学習・分析させて、データの分類や将来予測といったアウトプットを生成する技術を中核としています。

AIは自らが学習する機能を持った自律的な技術として認知されていますが、一方でAI単体で外部の存在に対して何らかの処理を行うことはありません。

現時点でのAIは、主に特定分野において情報処理を行うことを存在意義としているのです。

そんなAIとは対照的に、RPAとは簡潔に言えば手足です。

RPAは「Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の頭文字をとった略称であり、業務効率の向上に貢献できるソフトウェアとして注目されてきました。

既に日本国内でも広く利用されており、これまで人が手作業で行なってきた定型業務の多くをRPAが代行しています。

しかしRPAは人工知能ではないため、決められた動作を実行することができても、RPA自らが状況判断をして適切な処理を導き出すことができません。

そのため、不規則な環境変化 (動作環境内のUIが変わるなど) には脆く、AIのように学習と適応を繰り返しながら動作し続けることは不可能です。

改めてAIとRPAの違いを整理してみると、筆者の目にはオートノミックシステムがAIとRPA両方の機能を内包した存在として映ります。

これはあくまでも筆者の見解に留まりますが、継続的な学習を通じて解を導き出す頭脳を持ちながら実際に作業を行うことはできないAIと、自己判断能力には欠けるものの与えられた指示に沿って忠実に作業を実行するRPA。

オートノミックシステムとは、これら2つを掛け合わせ、学習から処理の計画・実行までをすべて単体で遂行する能力をもった技術を指すのではないでしょうか。

何に使われるの?オートノミックシステム

Gartner社は、将来的にはオートノミック・システムがロボットやドローン、製造機械などにも普遍的に応用されるだろうと予測しています。

筆者としては、オートノミックシステムがより高度な自動運転技術の実現にも貢献するのではないかと考えています。

現時点での自動運転は、あらゆる判断・動作の自動化が可能な「レベル5」に対して条件付きで操縦を自動化できる「レベル3」に到達していると言われています。

レベル3の自動運転技術は法的な枠組みの範囲内で走行をすべて制御してくれますが、緊急時にはドライバーによる介入が不可欠です。

オートノミックシステムを自動運転に応用することができれば、悪天候や緊急事態に左右されず、システムが生きている限りドライバーは何もしなくていい。

少々飛躍した予想図だと言われてしまうでしょうが、オートノミックシステムがヒトの思考プロセスを極限まで再現することができるとすれば、まったくの夢物語ではないかもしれません。

ビジネスにおいても、コンピューターの判断・処理能力が実務レベルでヒトを超える瞬間がやってくれば、「仕事」における私たち人間の価値は大きく見直されるかもしれませんね。

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