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2022年度版!データセンタービジネスの最新動向後編

2回にわたって特集している、データセンタービジネスの未来。

後編となる今回は、前編の最後でお伝えした、なぜ「データセンター同士の協業」が加速化しているかについて、協業のメリットとデメリットも併せてご案内致します。

我々が考察する「未来のデータセンタービジネス」を詳しく知りたい方は、是非、ご覧ください。

今後市場が拡大する中で、データセンター市場の変化の予測と今後求められることとは?

今後データセンター市場の拡大とともに、データセンタービジネスはどのように変わっていくのでしょうか?

前編でご紹介した事例を見ると、データセンターの拡大や電力コストの削減・環境への配慮の事例は、従来も行われてきました。しかし、「データセンター同士の協業」は今年度に入って顕著にみられるトレンドになっているので、以下ではこちらに焦点をあててご紹介します。

国内における協業が進む

前編では、「NECとSCSKの協業」と「BBバックボーンとMCデジタル・リアルティの協業」の事例をご紹介しました。

では、なぜ協業が進んでいるのでしょうか?その理由を考察していきましょう。

まずNECとSCSKの協業理由について、NECSCSKのプレスリリースを要約すると以下のようになります。

コロナ禍において、企業は事業継続性や機密情報の安全性確保に高く関心を寄せ、機能が豊富で柔軟性の高いクラウドサービスと併用した安心・安全なデータセンターの活用へのニーズも高まっている。

そんな中、SCSKとNECはクライアント企業のDX加速に向けたデータセンターを共同運営することで、クラウド事業者をはじめとするエコシステムパートナーを誘致し、クライアント企業にエコシステムパートナーへの接続における高い利便性・機密性と、エコシステムパートナーのサービスを活用する機会をもたらすことを目指している。

出典:NEC「SCSKとNEC、データセンター事業で協業~エコシステムパートナーとの接続サービスを共通化して提供~

すなわち、NECとSCSKはデータセンターの共同運営を軸にして、それぞれのパートナー企業との新たなビジネスチャンスを得ようとしていると言えます。

次にBBバックボーンとMCデジタル・リアルティの協業理由についても、BBバックボーンのプレスリリースを要約すると以下のようになります。

100Gbps超の広帯域を求める企業にサービスを提供してきたBBバックボーンには、「印西市から都内に50㎞以上ものダークファイバーや広帯域専用線を引いてくるのには膨大なコストと時間がかかる」という課題を抱えていた。

しかし、多様なサービス・柔軟な拡張性・ネットワークエコシステムへの接続性を提供するオープンなDCプラットフォーム『PlatformDIGITAL』を提供するMCデジタル・リアルティと協業することで、それらの課題を解決し、都内と印西を結ぶ既設のダークファイバーコストの半分以下の価格でテラビット級のDCIサービス『BBB Spectrumサービス』を提供できるようになった。

この協業によって、印西エリアのデータセンターを利用して膨大なトラフィックを支える通信環境を求める企業が、MCデジタル・リアルティのNRT10を印西エリアのハブデータセンターとして、BBバックボーンの『BBB Spectrumサービス』を利用できるようになった。

出典:BBバックホーン「BBバックボーンとMCデジタル・リアルティが 都内と印西間でテラビット級DCIサービスの提供に向けて協業」

すなわち、BBバックホーンとMCデジタル・リアルティは、お互いの持ち合わせている技術を用いて、企業により良いデータセンター体験を提供するために、協業を決めたと言えます。

ここまで2つの事例を見てきましたが、データセンタビジネスにおいて協業が選択されるようになってきたのは、データセンターが提供するサービス品質を向上させるためだと言えます。

ではなぜデータセンタービジネスにおいて、サービス品質の向上が求められるようになってきたのでしょうか?理由として挙げられるのが、近年巧妙化するサイバー攻撃です。

出典:令和4年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について

昨今、サイバー攻撃に関するニュースは後を絶えません。上記のグラフを見て頂くと、脆弱なシステムを見つけ出そうとする探索行為が、1日当たり、1IPアドレスに7800.3件来ており、年々増加していることが分かります。

また2022年3月には、森永製菓株式会社が外部の第三者から自社の複数サーバへの不正アクセスを受け、森永の通販利用者の個人情報が外部流出し、社内システムも障害が発生する事態が起こりました。

ここまでサイバー攻撃が流行するようになったのは、「価値ある情報」のデジタル化が背景にあります。これまでアナログで管理していた「価値ある情報」がデジタル化されたことで、その情報を狙い金銭を稼ごうとするハッカーが増えたためだと推察できます。

価値ある情報がデジタル化して以降、多くの企業がサイバー攻撃による被害を受けています。

そんな中、企業はデータセンターにどのようなサービスを求めるようになったのでしょうか?

それは「ハウジングサービスからホスティングサービス」への移行です。

企業は、地震や台風、洪水などによる被害を防ぐ場所を求めるだけでなく、デジタル化した情報を守ってくれるサービスを求めるようになっています。それに伴い単に場所を貸すハウジングサービスから、場所に加え運用・保守を支援するホスティングサービスを顧客は求めるようになっています。

ここまで国内におけるデータセンターの協業理由について考察してきましたが、内容をまとめると、サイバー攻撃の増加に伴い、企業はデータセンターにサービス品質の向上を求めるようになった結果、データセンターは各社の強みを生かしたサービス品質の向上を図るために協業を選択するようになったと言えるでしょう。

協業のメリットとデメリット

先ほどは国内におけるデータセンターの協業について背景を考察してきましたが、ここでは協業のメリット・デメリットについて整理してみたいと思います。

協業のメリット

①企業の独立性が保たれる

メリット1つ目は、他の企業からの介入や影響を受けず、自社の独立性を保てる点です。協業は対等な立場を基本としているため、独立性を保ちながら自社にはない人材や技術、ノウハウなどお互いの経営資源を活用でき、自社の事業のアップデートや新たなビジネスの発掘・発展が見込まれます。

②リソースを補完できる

メリット2つ目は、自社にはないリソースを持つ企業と協業することで、スムーズにビジネス基盤の強化が可能です。例えば、海外への自社製品展開を考えているものの、海外とのコネクションがない場合、現地の顧客ニーズやマーケットに精通した企業と協業することで、効率的な販路拡大・開拓や現地の価値観や嗜好性を踏まえた製品開発が可能となります。技術や人材、ノウハウ、情報、顧客網など、自社のビジネス発展には必要な一方で自社が持ち合わせていないリソースを得るために、協業という手段をとることができます。

③シナジー効果が得られる

メリット3つ目は、相乗効果とも呼ばれるシナジー効果が期待できる点です。たとえば、工場の倉庫や生産ラインなどを共有した場合、1社単独使用の場合よりも稼働率向上や物流コスト削減といった効果が期待できます。また商品やサービスなどの売り場を共有することで、企業が持つブランドイメージをかけ合わせられれば、売上アップも見込めます。すなわち、協業によっては、かけ算のようなシナジー効果を得ることができます。

協業のデメリット

①ノウハウの流出リスク

デメリット1つ目は自社が保有するノウハウの流出リスクがある点です。

企業同士が自社保有の技術やノウハウなどを提供し合う関係が、協業です。そのため、企業の根幹ともいえる技術やノウハウを期間限定とはいえ、開示する必要があり、業務提携の過程でそれらが流出する恐れがあり、最悪の場合、経営に甚大な被害が及ぶことがあります。

②経営判断の自由度が低下する

デメリット2つ目は、協業によって経営判断の自由度が低下することです。協業した場合、複数の企業が協力して事業を進めることになるため、お互いに歩み寄りながら、経営判断をしていく必要が出てきます。また協業相手と対等な関係性を構築できない可能性もあります。例えば規模に明確な差がある二つの企業・団体における協業の場合、形式上は対等な関係であっても、実質上は規模が大きい方の意見が優先され、研究開発やビジネスの主導権を奪われる事態も起こりえます。

③自社の都合だけで協業を解消できない

デメリット3つ目は、自社の都合だけで協業を解消できない点です。

協業によるメリットがなくなると協業の解消を検討することになりますが、どちらかの都合での一方的な協業解消は難しい場合があるので、協業の契約を締結する前に、相手企業の調査や分析、協業による効果とリスクなどを想定することが大切です。

おわりに

後編となる今回は、なぜ「データセンター同士の協業」が加速化しているかについて、協業のメリットとデメリットも併せてご案内してきました。

2022年のデータセンタービジネスのトレンドは「協業」ですが、トレンドに追随するために安易に協業という手段を取るのではなく、協業のメリットとデメリットを熟慮して選択されてみてください。

また本記事を執筆した株式会社コムスクエアでは、データセンターにおける監視運用基盤ツールであるパトロールクラリスを開発・販売しております。

ご関心のある方はぜひそちらもご覧くださいませ。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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