Gartner社が発表した「2022年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド」
今後ビジネス業界のスタンダードとなり得るトレンドをまとめたランキングを抜粋し、前回記事では「AIエンジニアリング」の解説を行いました。
そしてシリーズ第6弾となる今回は、同じくトレンドにランクインした「ハイパーオートメーション」を取り挙げてみることにしました。
記事執筆にあたって筆者なりに調査・学習してきましたので、是非ご一読ください!
目次
ハイパーオートメーション 10秒まとめ
- ハイパーオートメーションとは、これまでは部分的にしか自動化できなかった複雑なビジネスプロセスの自動化を実現する概念のこと。
- ハイパーオートメーションを実現する上で核となるのが、AI・機械学習・RPAの3つのテクノロジー。
- 複雑な業務の自動化は、ハイパーオートメーション以外の方法でも実現可能。
ハイパーオートメーションって何。
ハイパーオートメーションの説明に入る前に、言葉の意味に注目していきましょう。
まず「ハイパー」(英; hyper) とは、 程度や次元が通常をはるかに超えているさまを表す語です。
この「ハイパー」に、IT業界ではもはや常套句になりつつある「オートメーション」(=自動化) が結びついたのが「ハイパーオートメーション」。
和訳するならば、「超自動化」とでも表現すべきでしょうか。
では、超自動化する対象とは一体何なのか。
パソナテックの定義によれば、ハイパーオートメーションとは「RPAやAI、機械学習などのさまざまな技術とツールを駆使し、複数の業務を横断的に自動化しようとする」ことを意味します。
DXの名の下、ビジネス業界ではこれまでにも業務自動化が進められてきましたが、その対象はデータ入力や受信メールの振り分けなど、一つの業務領域の中でも局所的なタスクに限定されていました。
対するハイパーオートメーションは、タスクの垣根を越えて業務プロセス全体を自動化または効率化することを目標としています。
例として、マーケティング業務の自動化を想像してみます。
企業が新製品や新サービスの開発を進める際に、SNS上に投稿される既存サービスへの評価や改善要望を調査することは大切な活動です。
ただ、一口に調査といっても実際にはSNSでのデータ収集 (既存製品への評価など)、収集したデータの加工、分析、そして開発現場へのフィードバックといったタスクに分かれています。
従来の自動化がカバーしていたのは、これら一連のプロセスのなかでもデータ収集や分析といった一部分。
クリックひとつでロボットがすべて処理してくれるわけではなく、自動化したタスクの間は人力で繋ぐしかありません。
ハイパーオートメーションが実現すれば、このような自動化同士の隙間がなくなるため、本当の意味で「業務自動化」が達成できるはずです。
ハイパーオートメーション どう実現するの?
Gartnerは、ハイパーオートメーションの中心となるテクノロジーを、人工知能、機械学習、そしてRPAだとしています。
人工知能とは・・・
日本語で人工知能 (AI)は、文字通り知覚や思考といった人間の振る舞いをコンピュータに再現させる技術のことを指します。
AIはさらに、特定の分野のみに秀でた「特化型」と、より人間に近い形で様々な分野に適用できる「汎用型」に分類されます。
最も身近なAIの活用例といえば、ビッグデータの処理や機械学習をはじめとするデータサイエンス分野などが挙げられるでしょう。
詳しくは、AIについて解説した本シリーズの過去記事をご参照ください。
機械学習とは・・・
機械学習 (machine learning) とは、データを分析する方法の1つです。
コンピューターにインプットしたデータを繰り返し学習させることによって、データの背景にあるルールやパターンを発見する方法のことを示します。
機会学習には、
- 過去に記録された事象を学習しながら将来の予測を立てる教師あり学習
- 具体的な数値の予測ではなく、母集団の分類や構造化を目的とした教師なし学習
- 報酬という概念を用いてコンピューターにより適切な振る舞いを学習させる強化学習
をはじめとする、さまざまな学習モデルが存在します。
なかでも強化学習は、「環境」という抽象的な枠組みの中で目標到達までのアプローチをコンピューターに模索させることを得意としています。
数年ほど前にプロ棋士との対局に勝利して話題になった囲碁AI「アルファ碁」にも、この強化学習モデルが採用されていました。
RPAとは・・・
ロボティック・プロセス・オートメーション (Robotic Process Automation)、略してRPAとは、従来人の手で行ってきた業務の一部を自動化する技術、もしくはこの技術を用いたソリューションを指します。
一般的にRPAが用いられるシーンは、データ入力やデータベースのチェック、Web上でのマウス・キーボード操作といった、ある程度動作が定型化されたタスクの自動化。
RPAによる自動化には限界もあります。
RPAはコンピューター上の操作をパターンとして記憶して動作するため、例えば動作環境であるWebサイトのUIに変更があると、正常にタスクを処理することができなくなってしまいます。
また、単純作業の自動化を得意とするRPAは、事前に人間が与えた定義以上の動作をすることはできません。
記事前半で触れたマーケティング業務の自動化でいえば、RPAに任せられるタスクは
- Webサイト (SNS) にアクセスする
- Webサイト (SNS) から特定のデータを抽出する
- 事前に人間が書いたデータ分析用のスクリプトを実行する
といったように、いずれも「なにを・どこで・どの順序でやるのか」が完璧に設定されたものだけなのです。
反対に、抽出したデータの加工や分析にもとづく提言の作成といった、状況に合わせて柔軟な処理が求められるタスクは、RPAには不得意とされてきました。
ハイパーオートメーションが目指すのは、このようなRPA単体では処理しきれない業務を、人工知能と機械学習を用いて克服することです。
より正確には、業務処理を担うRPAに、人工知能と機械学習による状況判断・決定の能力を与えるというイメージでしょうか。
ハイパーオートメーションの価値は、これら3つのテクノロジーを複合的に活用することで、複雑かつ属人性の高い業務の自動化も実現できてしまうことにあります。
導入広がる ハイパーオートメーション
AIと機械学習でRPAを強化したソリューションは、すでに複数の分野で活用され始めています。
とくに象徴的な事例は、保険業界の活用。
保険会社は、有事の際に加入者から請求された保険金の払い出しを行いますが、実際には事前に給付可否を判断するための審査を実施しています。
請求処理だけであればRPAがこなすことも可能ですが、審査は単純に処理できるものではなく、不正な請求を検出する上でAIの力を借りながらも結局は人手で行うのが一般的だったようです。
請求処理から審査、給付可否の判断にわたる一連のプロセスを自動化できなかったのは、単純処理をこなすRPAとデータの分析・判断を行うAIがそれぞれ個別のテクノロジーとして採用されていたことに理由があります。
ハイパーオートメーションの概念を踏襲したRPAソリューションが導入されたことで、AIが膨大なデータから導いた決定・判断をもとにRPAが手足を動かす仕組みが完成し、自動化したタスクの隙間を人力で埋める必要がなくなりました。
「考えるRPA」が実現したことにより、自動化できる業務領域が一気に広がった印象がありますね。
ハイパーオートメーションだけじゃない?完全自動化への道筋
「考えるRPA」の登場が、労働人口の減り続ける日本のビジネス業界を救うターニングポイントとなりつつあることは間違いないでしょう。
ただ、複雑なビジネスプロセスを自動化する方法は実はハイパーオートメーションではありません。
RPAに知能を与える以外にも、RPA同士を繋ぐことでよりダイナミックな自動化を実現すするというアプローチは以前から存在していました。
具体的には、RPAの連携基盤となるソリューションを用いて自動化と自動化の隙間を埋め、人間が仲介せずに一連の業務を完全自動化するという方法です。
当メディアを運営する株式会社コムスクエアも、RPA連携・管理基盤となる自動化プラットフォーム「ロボシュタイン」を販売しております。
個々のRPAが単体で処理できる範囲は限られていますが、ロボシュタインが全体指揮を執ることによってこれまでは別々に動いていたRPA同士を連携させ、タスクAからタスクBへ、タスクBからタスクCといった具合に、自動化のオーケストレーションを生み出すことが可能です。
ご興味のある方は、ぜひ一度製品ページをご訪問ください!
おわりに
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